R100RS、始動困難ナリ。(その4)

たまたま当店ブログをご覧になり、整備の相談のご連絡をいただいていたお客様の始動困難なR100RS、整備と修理を進めています。

前回の捜査で主犯格の男を逮捕したモギー刑事ですが、事件の背後に潜む犯行グループの全容解明にはまだ至っていません。残る共犯者、協力者を挙げるため、今日も地道な捜査は続きます。

すでにエンヂンの始動不良については根本的な整備&修理が終わりましたが、もう少しご依頼の作業が残っていますので、引き続き作業を行います。

まずは、注文していたスロットルケーブルが入荷したので交換します。この頃の2本サスのR100RSのスロットルケーブル(2本引き)はムダに長く、こんな感じで変なクセがついてしまいます。グリスアップして動きは良くなりましたが、決して状態は良くありませんでした。

DSC_2827

せっかく交換するので、モノサスのR100RSと同じような長さ、取り回しになるケーブルに変更します。

こんな感じです。どうですかッ!

DSC_2886

モギー刑事  「なるほど、そんなコトがあったのか。」

さらに、ご予算の範囲内だったので、始動性向上のためのもう一手、セルモーターも交換させていただくことにしました。
これが、ちょっとくたびれたBosch製セルモーターでの始動の様子です。

DSC_2833
(動画でご覧いただけます。)

モギー刑事  「オイ、ちょっと署まで来てもらおうか。」
セルモーター 「エッ、エッ、チョットマッテクダサーイ!」

これがValeo製セルモーターになると、こうなります。

DSC_2856
(動画でご覧いただけます。)

ハッキリ違いが分かると思います。まだそれほど寒くない時期の作業場内での比較ですが、これから冬本番になって屋外でのエンヂン始動ともなれば、違いはより顕著になります。もちろんBosch製セルモーターもメインテナンスすれば動作は改善すると思いますが、当店がValeo製セルモーターをオススメする理由、感じていただけたでしょうか。(良質な宣伝)

で、交換するについでに

DSC_2837

エンヂン上部をキレイにし、ブローバイホースもしっかり締め付け直しました。

DSC_2838

ちょっとハーネスの長さが足りなかったので延長しています。

DSC_2847

ちなみに、元々付いていたナットはヒドイ状態でした。大きな電流が流れるので、わずかに緩みがあったのか、ワッシャーとくっ付いてしまってました。

DSC_2869

で、エンヂンのトップカヴァーを元に戻し、セルモーターの交換は終了です。

DSC_2871

モギー刑事  「これで、事件の本筋はあらかた片付いたな。」

しかし、捜査はまだまだ続きます。

お客様が過去に回そうとしたところ、「あ、コレはダメだ。」と諦めたフランヂナットを取り外さなければなりません。

DSC_2908

モギー刑事  「なんだか嫌な予感がするな・・・?」

DSC_2909

ひとまずオイルを抜きまして、ちょっと考えます。

DSC_2899

なんせ、この2本サスのR100RSの場合、イグゾウストパイプを外さないとオイルフィルターの交換ができません。(2本サス後期から外さずに交換できるようになってます。)

DSC_2903

モギー刑事  「この隙間じゃ、逃げようがないな。」

とりあえず回せる範囲でフランヂナットを緩め、イグゾウストパイプをコツコツ叩き、なんとか外すことができました。これでフィルターの交換もできます。ホッ。

DSC_2929

フィルターの交換と同時に、オイルクーラーの取り出し口周りをキレイにし、

DSC_2947

オイルプレッシャースウィッチの締め込みがちょっと甘いのか、取り付け部から滲んでましたので

DSC_2921

しっかり締め込んで、キレイにします。

DSC_2931

エンヂンの後側も確認します。ニュートラルスウィッチから漏れているようですが、量はそんなに多くなさそうです。むしろ、オイルパンのガスケットの濡れ具合を見ると、こちらのほうがアヤシイですね。

DSC_2925

オイルパンのボルトを増し締めし、キレイにして様子見です。
ココのボルトはあまり強く締め込みすぎると相手側のネジ穴をダメにしやすいので、増し締めはほどほどのトルクで行い、それでもオイル漏れが止まらない場合はガスケットを交換することをオススメします。

DSC_2939

と、オイル交換とエンヂンの清掃も終えたので、いよいよフランヂナットの取り外しです。

お客様が回すことを諦めた左側ですらこの状態なので、

DSC_2948

実際に回されて嫌な感触を味わった右側はご覧の通りです。ギャー!

DSC_2952

モギー刑事  「コ、コイツは・・・!」

ネジ山をシュッシュッと目立てしながら、フランヂナットを付けては外しを繰り返し、アンチシーズを塗り込んで、どうにかフランヂナットがクルクル回るようになりました。アンチシーズを塗ってないと少し引っ掛かりが残りますが、ココまで締め込めるようになれば次回の取り外しはきっと容易だと思います。

DSC_2965

てことで、イグゾウストパイプを取り付けて、しっかりフランヂナットを締め付けます。せっかくネジ山を修正したのに、ビビッてやんわり締め付けては意味がありません。ドキドキ。

DSC_2972

モギー刑事  「フゥ、てこずらせやがって。」

これで一段落かなと思いましたが、やっぱり甘くないッ!

DSC_2997

モギー刑事  「オイオイ、一体どうなっているんだ!」

さっそくオイルクーラーの取り出し部から、ちょっとオイルが垂れてきています。バンジョーボルトのガスケットからも垂れているので、まとめて増し締めしておきました。キレイにすると漏れや滲みのある場所を特定しやすくなりますので、やはり清掃は大事ですね。トホホ。

DSC_3002

さらに、インヂケーターの幾つかのランプが点いたり点かなかったりするので、その点検&修理も。症状からおおよその見当は付いてますので、配線図とにらめっこして疑わしいスターターリレイの接続を点検します。

DSC_3007

リレイを取り外すと、端子に汚れと錆びがありました。

DSC_3023

モギー刑事  「ウッ、こりゃヒドイ・・・!」

キレイに磨きます。

DSC_3027

が、端子をキレイにしたことで症状が悪化ッ!

こうなりゃ、コネクターから端子(メス)も外し、まとめて相手してやるッ!

DSC_3063

ついでにオイルで汚れていたコネクターとハーネスもキレイにし、リレイをしっかり繋ぎ直しました。ちょっとブラついていたハーネスもまとめましたので、インヂケーターの点灯不良の原因がリレイ側にあったとすれば、これでOKになるハズです。

DSC_3034

メーターとメインハーネスのコネクターの接続も点検しておきましたので、これで症状が再発しなければ大丈夫かと思います。こちらでも試乗して確認してみますが、あまり長時間乗れるわけではありませんので、最終的にはお客様に確認していたくことになりそうです。再発した場合は、あらためてご相談ください。(納車した翌日、再発したとの連絡が入りました。ズコー。)

モギー刑事  「・・・。」

また、後付けのフューエルフィルターを取り外したことで、当店オリヂナルのスターターノブはあまり干渉しなくなりましたが、これでオーヴァーフローを誘発してしまっては台無しです。

DSC_2884

モギー刑事  「ストレートタイプのコックだと少し干渉する、と。」

左フューエルコックの取り付け向きも修正したかったので(このままでは修正できないほどナットが固着してました)

DSC_3038

コックを外してO/Hします。ガソリンタンク内部の状態も悪くないのでそんなに多くはないですが、防錆塗料が剥がれたカスがちょっと溜まってましたので、タンクも軽く洗浄しておきました。

DSC_3074

バラバラに分解し、ジャブジャブ、ゴシゴシ洗浄します。

DSC_3086

ガスケットとO-リングは状態が良くなかったので交換しました。

DSC_3093

ビシッと組み立てて、タンクにコックを取り付けます。おっし、滲みなし!

DSC_3107

このストレートタイプのコックの場合、上下に2箇所、ベイクライトのガスケットを使用しますが、上側は部品の供給がありますが下側はありませんので、再使用するとちょっとドキドキしますね。適当なサイズの代替品があれば良いんですが。

コックの向きも修正できました。やっぱり、このほうが落ち着くッ!

DSC_3103

モギー刑事  「よし、あとは捜査報告書をまとめるだけ、か。」

 

~翌日~

エンヂンの清掃と取り付けボルトの増し締めのおかげで、一晩置いてもオイルが垂れた跡はありませんでした。ヤッタネ!

DSC_3043

が、オイルパンガスケットの辺りからさっそく滲んできています。ポタッとする寸前・・・。

DSC_3046

定番のプッシュロッドチューブの根元からはもちろんですが、オイルパンのガスケットは交換しないとダメみたいですね。今後の整備でご相談ください。

それから、ファイナルドライヴのブリーザーを塞いでいたシリコンガスケットは取り除いておきました。このタイプのケースは確かにオイルを噴きやすいですが、この出口を塞いでしまうと、ケースの内圧が高くなったときに他のオイルシールからオイルを噴いてしまうことになります。

DSC_3042

オイルの量が規定量であれば(このケースは250mlのところ300mlほど入ってました)、当店で使用しているオイルでココからオイルを噴くことはないと思います。冬場ほどオイルを噴きやすくなりますので、これからの季節、また気になるようでしたらあらためてご相談ください。

それと、試乗した際にカウルのガタつきが大きかったので確認したところ

DSC_3097

前側の下2箇所のボルトが脱落していましたので、しっかり取り付けておきました。(この前もこんなことがあったような?)

DSC_3099

モギー刑事  「よし、請求書、じゃなくて報告書も書けたぞ、と。」

ということで、すべての作業終~了~。

 

車体周りの整備は手を付けていませんが、試乗した感じブレーキもよく利きますし、ハンドルのブレもなく、車体の安定感も悪くありませんでした。ただ、お伝えした通り、トランスミッション以降の駆動系に少し違和感がありますので、また時期を見て点検&修理にお越しいただければと思います。
ともあれ、ようやくエンヂンの状態が元に戻りましたので、この冬は存分にR100RSの無敵のフルカウルを楽しんじゃってください。この度はご依頼いただき、有り難うございましたッ!

 

こうして事件は無事?に解決。しかし、まだこの世の中には不届きなヤツ(不調車輌)がいるッ!すぐに次の事件(お仕事)が(を)待っている、モギー刑事なのであった・・・。

新米刑事   「先輩、もうヤめてください!」
モギー刑事  「うっさい!もうちょっとアゴ触らせろっ、このヤロー!」

2623

 

(未完)

 

セルモーターの交換や、オイル交換、オイルフィルターの交換だけでなく、カジったフランヂナットの交換も、承っておりますッ!