遠方からご依頼のあったシリンダーヘッドのO/H作業ですが、内燃機加工から上がるまでの間にできる作業を進めます。
こちらのお客様がお乗りのR65(2本サス)、入手したときから「何かがオカシイッ!」と感じた理由の一つにキャブレターがあったそうです。メールでのやり取りの中でも確認していただきましたが、どうやら年式、車種違いのキャブレターが使用されているようでした。当初は現在付いているキャブレターをO/Hしてセッティングを確認&変更する予定だったのですが、都合良く中古品を入手できたとのことで、そちらも送っていただくことになりました。
てことで、届いたキャブレターを確認するところからスタートです。
今まで使用されていたキャブレターは、右が「64/32/354」、左が「64/32/307」と刻印されており、調べてみると左キャブレターはR65用ですが、右キャブレターはR80用でした。
錆びや汚れといった状態も気になりますが、左右で型番がまったく違うのはマズイですね。車種や年式で内部のメインジェットやニードルジェット等の構成部品も異なりますから、そのまま組み合わせてしまうと左右でチグハグなセッティングになってしまい、結果、燃焼状態までチグハグになってしまいます。
そして、こちらが後日送っていただいたキャブレターです。
刻印は右「64/32/364」、左「64/32/363」となっています。BING製キャブレターの型番は下一桁が1番違いのセットになっていますので、こちらは同一車輌から取り外されたモノで間違いなさそうですね。調べてみても正確には分かりませんでしたが、R80(モノサス)辺りのような感じです。(後日、R100RS(モノサス)で使用されていることを確認しました。)
スプリングが新しいので、比較的最近まで乗られていた車輌から外されたモノかもしれません。
簡単に確認してみましたが、中の状態も悪くなさそうでしたので、こちらのキャブレターをO/Hすることにします。レッツラ・ゴー!
ということで、いつものようにバラバラに分解して
ジャブジャブ、ゴシゴシ洗浄します。
真鍮部品もピカピカにしておきます。
で、ココからがちょっと大変です。車種ごとのキャブレターのセッティングの資料とお客様のR65の車台番号を基に、適合する(であろう)キャブレターの型番を調べそのセッティングになるように構成部品を変更します。今まで使用していた左キャブレター「64/32/307」がオリヂナルのような気もしますが、資料からは別の型番が適合していましたので、今回はそのセッティングを目指すことにしました。(「64/32/307」に近いセッティングですので、大きな問題はないと思います。)
ニードルジェットは「64/32/307」と一致しましたが、1つしかありませんでした。形状も少し違いますので、新品を2個使用します。
メインジェットはどれも合いませんので、こちらも新品を使用します。
ヴァキューム取り出し部のネジが傷んでいたので、ついでに新品に交換します。
スロージェットは番手が合っていましたので、詰まりを確認して再使用しました。メインジェットホルダーやアトマイザー、パイロットスクリュー、フロート等は共通部品ですので、こちらも再使用になります。
フロートチャンバーのホルダーは状態の良いモノを選びました。
これで、キャブレターの下側はOKです。
スターター(チョーク)ヴァルヴは、「64/32/307」と「64/32/354」のモノが4つ穴でしたので、そちらを選びました。(写真左)
レヴァー、スプリング、ナット、ワッシャーも状態の良いモノを選んでいます。
バタフライとバタフライシャフトは、メインボアとの相性を考えそのままの組み合わせにしました。ピシッと閉じているッ!
ピストンヴァルヴも刻印に違いがありましたので、揃っている2つをそのまま使用しました。よく見比べてみましたが、大きな違いもなさそうでしたので。
ジェットニードルも同じ理由で、そのまま再使用しています。
ダイアフラムを固定するネジはめっきの色が違いましたので、些細なことですが揃えておきました。(意外と細かい男です。)
ダイアフラムはお客様が交換したばかりとのことでしたので、そちらを使用しています。
ピストンヴァルヴのリターンスプリングはピッチの細かいモノにしたかったのですが、1本しかありませんでしたので、2本とも新品にしました。
ちなみに、左2本が後から送っていただいたモノで、右2本(チグハグ!)が今まで使用していたモノになります。一番左の1本を除き、どれもかなりヘタっていました。
それと、トップカヴァーですが、中央のキャップがカタカタと遊んでいましたので、今までお使いだったモノを使用しました。
と、いつもより手間は掛かりましたが、お客様のR65の年式に適したキャブレターに仕上がったんじゃないでしょうかッ!イエス!
あ、こちらの部品取りと化したキャブレターは仮組みしてお返しします。決して面倒なわけじゃありませんよ。決してッ!
以上、長くなりましたが、キャブレターのO/H作業のご報告でした。
今までお使いだったキャブレターのチグハグさを考えると、お客様が感じていた「何かがオカシイッ!」という疑問も当然だと思います。今回のO/Hとセッティング変更で本来の仕様にかなり近づけられたハズですので、次にR65に乗られるときはちょっと驚くくらいの変化があるかもしれませんね!エンヂンも腰上をO/Hしていますし、こりゃ期待できそう~。
さあ、次はシリンダーとピストンの洗浄に取り掛からねば!