たまたま当店ブログをご覧になり、整備の相談のご連絡をいただいていたお客様が、本当にご来店くださいました。有り難いことですッ!
症状としては、「とにかく始動が困難で、最近、特にエンヂンの掛かりが悪く、吹け上がり方もオカシイ」ということらしく、「自分の手には負えそうにないので、この際、しっかり診て欲しい」とのこと。実際に確認してみると、エンヂンが温まっているので始動はそれほど難しくはありませんでしたが、確かに回転の上昇、下降の様子がオカシイ。タコメーターの針の動きは、明らかに混合気が薄いときの症状ですが、どうもそれだけではないような感じです。
お客様がこちらのR100RSを所有されて5年ほど、オイルやブレーキ、タイアなどの消耗品はしっかり交換されてきたそうですが、他の整備についてはそれほど手を付けていなかったそうなので、各部の状態の確認も含めての作業になりました。ちょっと手強そうな予感もありますが、「バイク屋に頼むときは、自分でできない作業を頼むとき。請求書を見ても高いとは言いませんよ。ガハハ!」とのお言葉もいただき、俄然、ヤル気が出てまいりました。
「請求書を見ても高いとは言いませんよ」
「請求書を見ても高いとは言いませんよ」
「請求書を見ても高いとは言いませんよ」
いやん、カコイイ・・・。
ということで、お客様がお帰りになった後、さっそく冷えた状態からエンヂンの始動を確認してみます。
まったく掛けられません。バイク屋ですから、エンヂンの始動にはそれなりに慣れているつもりですが、まったくダメです。何度セルモーターを回しても、掛けられる気がしません。一体、お客様はどうやってエンヂンを始動させていたんでしょうか?
とりあえず、簡単に確認できるところから点検します。
すると、右キャブレターのスターター(チョーク)のケーブルの動きに、何か違和感が。
ガーン。レヴァーを操作してスターターを使用すると、その後、レヴァーを戻してもアウターケーブルが抜けてしまい
スターターが利きっぱなしになっているッ!
なので、スターターを指で直接操作して、ようやくエンヂンを始動させることができました。が、今度は
まったく吹け上がりません。バイク屋ですから、スロットル操作にはそれなりに慣れているつもりですが、まったくダメです。何度スロットルを煽ってみても、吹け上がらせられる気がしません。一体、お客様はどうやってエンヂンを吹け上がらせていたんでしょうか?
うーん、何かが根本的にオカシイ。本当に俺に直せるのか・・・?
「請求書を見ても高いとは言いませんよ」
「請求書を見ても高いとは言いませんよ」
「請求書を見ても高いとは言いませんよ」
やってやるッ!
やはり、ココは基本の「良い混合気、良い圧縮、良い点火」に立ち返って、一つ一つ確認していくことにします。圧縮は、左右のシリンダーで同じような値がそれなりの数値で出ていましたので、問題なしと判断。となれば、お次は点火系です。
マイナスネジが片方ないのも気になりますが、ポイントギャップはもっと気になります。何しろ、現状を確認しようにも0.10mmのシックネスゲーヂが入るかどうかといった具合で、しかもゲーヂが何かに当たってしっかり挿し込めないという。ポイントの動きを確認したいだけなのに、老眼の目を凝らしてもポイントが開閉しているのかすら分からない始末。
てことで、ユニットごと取り外し、分解します。
犯人はコイツでした。
一見、何食わぬ顔で
「今日の午後?何してたかって?ちゃんと開閉してましたよ、ホントっすよ。」
と言っているようでしたが、強引に口(クチ)を割らせたところ、大変なブツを隠し持っていることを白状しました。こりゃ、捜査の手(シックネスゲーヂ)が届かないハズです。
敏腕デカ、モギー刑事の手により犯人も逮捕されましたので、ポイントを交換します。
元通りに組み立てて、ポイントのユニットもキレイにしました。ポイントギャップはこの状態でも調整できますので、規定値0.40mm~0.50mmの範囲内にビシッと調整しておきます。コンデンサーはまだ新しいようなので、そのままにしておきました。
オイルは漏れていませんでしたが、O-リングが潰れて変形していましたので、こちらも交換しておきます。
いつものように、点火時期が確認しやすいようにホワイトペンで「S」マークを塗り、
ポイントのユニットを元に戻してエンヂン始動!点火時期も調整!
どうなのよッ!
始動性はかなり改善しましたが、今度は回転の下降具合の異常がより鮮明に・・・ということは、複数犯によるもの?事件はまだ続いているッ!
「請求書を見ても高いとは言いませんよ」
「請求書を見ても高いとは言いませんよ」
「請求書を見ても高いとは言いませんよ」
解決したかと思われたこの事件、まだ野放しの犯人がいることが判明。捜査範囲を拡げ、捜査費用も新たに計上し、引き続き犯人逮捕に向けて捜査を継続していきます。