何を言っているのか。(その2)

先日ご紹介した「何を言っているのか。」のR100RS、さっそく整備と修理を進めています。

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まずは、前オーナーも認識していたというブレーキランプの不具合。前オーナー曰く、「リアのブレーキスウィッチが壊れていて、ブレーキランプが・・・」とのことでしたが、点検してみるとスウィッチに異常はありませんでした。ということは、フロント側のスウィッチかな?

でした。スウィッチが壊れていて、ブレーキレヴァーを握ってもONになりません。

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安くはありませんが、こればかりは交換しないとどうしようもないので、新品のスウィッチに交換です。

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これで直ったかなと思ったら、まだブレーキランプが点きませんッ!

配線に問題はなかったので、まさかの球切れを疑いましたが・・・

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シングル球のはずが、ダブル球にッ!

シングル球に交換したら

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あっさりブレーキランプが点灯するようになりました。んもう!

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続いて、怖いくらいに震えていたハンドルの振れを改善するため、ステムベアリングの締め付け具合を点検、調整してみます。

R100RSの場合、ステアリングダンパーのロッドが邪魔をしてステムナットを締められないのでけっこう大掛かりな作業になってしまいますが、ベアリングを交換する予定なのでココまで取り外してしまいます。

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で、前オーナーも認識していたというもう一つの不具合も点検。曰く、「フォークのオイルシールは交換したが、まだ漏れているのであらためて交換の必要が・・・」とのことでしたが、これはシール交換でどうこうできる状態じゃないような?

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インナーチューブの摺動部にこれだけ錆びと縦スジがあると、何回シールを交換しても漏れは直りません。お客様にはかなりの負担になってしまいますが、再めっき済みのインナーチューブに交換するしかななさそうです・・・。

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てことで、ステムベアリングを調整し、ステムナットをしっかり締め付け直しました。
ステムナット自体はしっかり締め付けてありましたが、アジャストナットがユルユルだったので、これでハンドルの振れはかなり改善するんじゃないでしょうか。

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ちょっと試乗してみます。正直、前回の試乗では良いトコロも、悪いトコロもまったく分かりませんでしたから。アハハ。

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オォッ!怖くなくなったッ!

ということで、簡単にインプレッションを。
ステムベアリングの締め付けを調整したおかげで、ハンドルの振れはほとんど気にならなくなりました。が、まだフロント周りが上下にフワフワする感じです。新品のタイアに騙されて空気圧の点検を怠ったせいもありましたが、適正な空気圧に調整してもやっぱり気になります。
それと、キャブレターのジェットの詰まりを直してエンヂンはだいぶ元気になりましたが、なんだかまだ少しパワーが足りない感じです。ほぼ同年式の当店在庫のR100RSと比べると、加速感がモッタリしていてチョット物足りません。スロットル操作が重いことも一因かもしれませんが、しっかり整備して再度確認する必要がありそうです。ただ、走行距離の割りに異音があまりないのが幸いです。
車体の状態は未整備車輌らしいヤレた印象ですが、とりあえず走る、曲がる、止まることは問題なくできていますので、こちらもしっかり整備すればグッと良くなりそうです。
何より、前オーナーが言っていたクラッチ板の滑りは、やっぱり確認できなかったのが大きいです。クラッチ板の交換となると、ついでにできる作業も色々と見つかって、その分コストが掛かってきますからね。
うーん、現状で把握できたトコロはこんな感じでしょうか。

 

おっし、そんじゃ作業に取り掛かりますか!あ、チャーヂランプを忘れてた・・・。

 

(続く)

 

ブレーキスウィッチの交換からバルブの交換、ステムベアリングの点検&調整やフロントフォークの点検、試乗による点検とダメ出しまで、諸々ご相談くださいッ!

何を言っているのか。

い…いや…

体験したというよりは まったく理解を 超えていたのだが………

あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!

「集めた部品から1台のバイクを仕上げるつもりでいたら いつのまにか 出来上がった1台のバイクが目の前にあった」

な… 何を言っているのか わからねーと思うが

おれも 何をされたのか わからなかった…

頭がどうにかなりそうだった…

催眠術だとか超スピードだとか そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ

もっと恐ろしいものの片鱗を 味わったぜ……

グググ
ジョジョの奇妙な冒険より

てことで、急遽、R65(2本サス)にお乗りのお客様からR100RSの整備のご依頼をいただきました。

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元々、集めた部品から1台仕上げるというお話は聞いていたんですが、まさかその前に1台購入されるとはッ!

確かに、これからの季節にはR100RSは最高の乗り物ですからね、分かります。
分かりますが、分かりますがッ、分かりますがッー!

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で、車輌の状態ですが、とりあえず車検を通しただけという感じらしいです。走行距離は47,600km。前オーナーによれば「幾つかの不具合は事前に分かっているので、そこだけ直せば安心して走れるようになる」とのことだそう。今後の計画もあり、お客様は「なるべく低予算で!オナシャス!」とおっしゃっていますから、応えないわけにはいきません。
触ってみないと分かりませんが、なんとかしましょう。やってやるッ!

てことで、さっそくエンヂンを始動してみますが、スロットルケーブルに遊びがまったくなく、タコメーターの回転の上がり方、下がり方がなんかオカシイ。アイドリングも1,500rpm以上になってます。

左側キャブレターのケーブルのアジャスターを見ると、完全に締め込まれているのにまだ遊びがないッ!

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通常、右側のアジャスターくらいの余裕があるハズなので、このくらいの遊びが作れないとなると

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スロットルのギアの噛み合いがズレてますよね、やっぱり。

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正しくは、こうです。

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チェーンの付いたギアとスロットル側のギアの合わせマーク(|)が一致してるのが分かるでしょうか。おそらく、カヴァーを閉じるときにギアがズレてしまったんだと思いますが、歯が一つズレただけでもケーブルの遊びに大きく影響しますので、注意が必要です。(経験者談)
この車輌のケーブルはパンパンに張っていましたから、アイドリング時でもスロットルがちょっと開いたままになってしまい、結果、回転数が高くなっていたんだと思います。

簡易的にキャブレターの同調を取って調整し、さあ、これで試乗に行けるかと思いきや、いざ走り出してみると、今度は上手く前に進みません。R100RS本来のトルクがまったくなく、まるで片肺になったときのようなパワー感。店を出て30mも行かないトコロでUターン、すぐに店に戻り点検します。

左右のシリンダーがしっかり熱くなっていますので、片肺じゃありません。こういうときは、点火時期が狂ってたりするもんなんですが

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点検してみると、ビシッと安定してました。回転数を上げると、最大進角のFマークまでしっかり進角もしています。となれば、次に疑うのはキャブレターです。

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ビンゴッ!片側のキャブレターのメインジェットが完全に塞がっているッ!

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とりあえず、キレイにして目詰まりを直しました。

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スロージェットも、やはり片側がゴミで塞がり気味だったので

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キレイに穴が通るようにします。

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エンヂンを始動してみると、明らかに力強く回転が上昇しているッ!

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(動画でご覧いただけます。)

チャーヂランプが薄っすら点いたままになっているのが気になりますが、回転を上げたときの充電電圧は13V後半でしたので、とりあえずはOKということにしておきます。
それよりも、ひょっとすると前オーナーが言っていたという不具合箇所の一つ、クラッチ板の滑りというのはこのトルクのなさのことだったのかもしれません。正直、あんなトルクでクラッチ板を滑らせることはできませんから。だとすると、心配事が一つ消えたことになります。バンザイ!

ついでに、クラッチレヴァーの遊びもほとんどなかったので
(アジャスターは目一杯まで締めこまれています。)

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リリースアーム側のボルトを調整し、適度な遊びを作りました。

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さあ、これでもう一度試乗にッ!と思ったんですが、近所を少し走っただけで怖くて帰ってきてしまいました。とにかく、40~50km/hでハンドルがブルブル震えるッ!

今までにも何台かハンドルの振れは経験してきましたが、コレほどのブレは初めてです。40km/h付近から常にブルブル震えていて、いつ大きく振られるかと思うと怖くて走っていられません。お客様は自走でご来店くださったんですが、何もなくて本当に良かったと思うくらいです。

ただ、「低予算をご希望の割りに、けっこう大物やん・・・」と思わせたクラッチ板の滑りはなさそうなので、その分、ステムベアリングの整備やキャブレターから出てきた水とゴミへの対処、

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本来、この位置で止まるはずのガソリンが

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この位置じゃないと止まらないフューエルコックの交換等、別の作業に予算を当てられると思います。

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不安なく、しっかり乗り出せるように整備するとなると、当然それなりのコストがもう少し掛かってしまいますが、短い試乗ではあったものの車輌の状態はマズマズだと感じましたので(ハンドリングは論外でしたが)、良い買い物だったんじゃないかと思います。

ご友人とシェアされる車輌とのことですので、お二人が存分に楽しめるよう、予算に応じた整備をビシッとさせていただきます。ご安心&お任せくださいッ!

 

(続く)

 

「個人売買で中古車を買ったけど、コレってどうなのよ?」と愛車の状態に疑心暗鬼な方、試乗による点検とダメ出しも、承っておりますッ!

R45、フロントブレーキのO/Hと灯火類の点検。

なかなか売り上げの伸びない兄の店を案じ、兄想いの優しい弟が「最近、BMWが気になんだけど!一年くらいで、カッコイイの仕上げてくんない?」などと右も左も分かってないようなコトを言ってくれたので、とりあえずあてがうことにしたR45、さっそく登録に向けて整備を開始しています。

エンヂンの整備と始動確認も終わったので、今日は引き摺りのキツかったフロントブレーキの整備に取り掛かります。

まずはキャリパーを分解して洗浄し、O/Hします。

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マスターシリンダーも取り外してO/Hしようとしたところ

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リザーヴタンクのキャップが外れないッ!
このキャップ、樹脂製のタンクに埋め込まれた雌ネジにボルトで固定されているため、雌ネジが空回りしちゃうとどうしようもありません。しかも、タンク単体の部品設定がありませんので、修理できない場合、マスターシリンダーごと交換になるようです・・・。

途方に暮れている暇はないので、在庫にあった角型タンクのマスターシリンダーをO/Hして取り付けることにしました。

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この頃のR45(とR65)はブレーキホースの取り回しが独特なので、取り付けにちょっと苦労しました。

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バッチリ!です。キャリパーの動きも良く、引き摺りもなくなりました。もちろん、ブレーキフルードの漏れも滲みもありませんッ!
ホウィールも軽~く回りましたので、ベアリングの状態も良さそうです。

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これなら、車検登録に持ち込んでも問題なしですね。

ということで、灯火類とホーンの点検をして作業終了と思いきや、ブレーキスウィッチが壊れてランプが点きっぱなしだったので、交換しました・・・。

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灯火類の点検のついでに、ヘッドライトレンズもピカピカに磨いておきます。

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レンズのシールが千切れていますが、けっこう多くの車輌でこうなります。長い間密着したゴムがレンズとリフレクターに張り付いてしまい、レンズを外すときに切れやすいんです。
常時在庫するようにしていますので、シールが傷んでいる方、ご注文くださいッ!サイズも大と小の2種類ありますので、ご注文の際は車種もお知らせ願います。

てことで、ヘッドライトもキレイになりました。ライトを点灯してみてもピカッー!と明るいので、光量不足で不合格になることはなさそうです。光軸はちょっと心配ですが・・・。

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これで、検査登録のための作業は完了です。24ヶ月点検の項目もすべてクリアできました。バンザイ!

それほど期間は長くないとはいえ、やはり不動車です。ココまでの作業だけでも、けっこうな時間と部品が必要になりました。
バイク屋なので問題が起きても逆に燃えますが、個人の方がこういう車輌を起こす場合、途中で諦めてしまうこともあるんじゃないかと思います。そしてまた長期間放置され、ますます状態の悪い不動車になり、最終的には部品取り車になってしまうのかも・・・。
もう生産されることのない車輌です。しっかり直せば甦らせられる車輌なら、なんとか起こして欲しいと思います。小さなコトでも構いません。できるだけのお手伝いを致しますので。

さてと、あとはちょっと車体をキレイにしてやれば、いよいよ登録です。やってやるッ!

 

(続く)

 

不動車を登録できる状態まで起こしたい方、ご相談くださいッ!

R45、エンヂンの整備と始動確認。

なかなか売り上げの伸びない兄の店を案じ、兄想いの優しい弟が「最近、BMWが気になんだけど!一年くらいで、カッコイイの仕上げてくんない?」などと右も左も分かってないようなコトを言ってくれたので、とりあえずあてがうことにしたR45、さっそく登録に向けて整備を開始しています。

キャブレターをO/Hしてエンヂンが掛かることを確信したので、始動前にエンヂンの整備をします。

まずはオイル交換です。エンヂンオイルは当然、こんな感じですが

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トランスミッションからは水が、水が?水がッ!出てきているッ!

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それも、1.6リットルも。

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通常、トランスミッションには0.8リットルのオイルが入りますから、倍くらい水が混入していたことになります。いくらトランスミッションに水が浸入しやすいと言っても、こんなに入っていたのは初めてです。こりゃ、O/H決定ですね。ギアやシャフトにダメーヂがあまりないと良いんですが。

気を取り直して、ロッカーアームの点検とヴァルヴクリアランスの調整をします。幸い、ロッカーアームにもヴァルヴのステムエンドにも異常はありませんでした。一安心です。

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屋外で長期保管されている車輌は、どうしてもココに水が入ったり、汚れが溜まったりしますので

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しっかりキレイにしておきます。

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オイルフィルターの状態も不明なので、交換しておきます。

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フィルターカヴァーの当たり面をキレイに均したら

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スペーサー、O-リング、ガスケットを正しく組み合わせてフィルターを取り付けます。

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オイルフィルターの組み付け時、けっこう間違えてスペーサーやガスケットを使用されている車輌があります。不安な方、ご相談くださいッ!

不動車ということもあり、ちょっと気になるオイルパンも取り外します。

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スラッヂはそれなりに溜まっていましたが、嫌な金属粉は混じってませんでした。またまた一安心です。

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キレイに洗浄してやれば

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ご覧の通り。

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てことで、オイルを交換してエンヂン始動ッ!

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(動画でご覧いただけます。)

あっさり掛かり同調も決まったッ!

点火時期もビシッと安定しているッ!

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心配した排気漏れもなしッ!

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うーん、こうやってエンヂンが無事に掛かるようになるのは、何度やっても嬉しいですね。しかも、予想に反して調子の良さそうなエンヂンなんで、尚更です。

洗浄しておいたガソリンタンクもすっかり乾いたので、在庫していたO/H済みのL字タイプのコックを取り付けて、車体に戻しました。

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ココまで来ると、俄然その気になるー。

さて、明日は引き摺りのキツいフロントブレーキの作業です。やってやるッ!

 

(続く)

 

不動車のエンヂンの整備、始動確認も、ご相談くださいッ!

R45、エンヂンの始動確認とキャブレターのO/H。

なかなか売り上げの伸びない兄の店を案じ、兄想いの優しい弟が「最近、BMWが気になんだけど!一年くらいで、カッコイイの仕上げてくんない?」などと右も左も分かってないようなコトを言ってくれたので、とりあえずあてがうことにしたR45、さっそく登録に向けて整備を開始しています。

まだ何も手をつけていませんが、1~2年前にエンヂンの始動を確認しているそうなので、まずは興味本位で新品のバッテリーに交換してエンヂンの始動を試してみます。インテイクマニフォウルドを覗いたところ、とりあえずオカシナことにはなってなさそうなので。

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完全に片肺ですッ!

イグニッションコイルを点検しても問題はなかったんですが、コイルがコンニチハしていた理由が

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分かりましたので(ステイが取れているッ!)

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ソッコーでダイナコイルに交換しました。

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で、原因はキャブレターにありましたので

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こちらもソッコーでO/Hします。

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ちなみに、右側キャブレターのスロージェットとメインジェットが完全に目詰まりしてました。各ジェットの通路をキレイに通したんで、これでエンヂンはすんなり掛かると思います。

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それと、試しにエンヂンを始動したとき、ちょっとセルモーターの回り具合が怪しかったので

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在庫しているO/H済みのValeo製セルモーターに交換しました。これで、ますます始動し易くなりますね。(セルモーターのO/Hについては、コチラで紹介しています。)

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また、ブローバイガスのホースにスポンヂ?のようなものが挿入されていたので、コレも取り除きました。

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取り外したカヴァーも、検査官の心証を良くするためキレイに洗浄しておきます。

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どうですかッ!

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キャブレターには、当然、当店オリヂナルのスターターノブがッ!

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なんかノッてきたので、この勢いでガソリンタンクも洗浄してやるッ!

バァーン!

 

水しか入ってませんでした。

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フゥ。何度かガソリンで共洗いして水分もゴミも取り除けたので、フューエルコックも分解、洗浄しておきます。このストレートタイプのコックはあまり好きじゃないので、L字タイプのモノに変更するつもりですが。フゥ。

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とりあえず、エンヂンを始動できそうな手応えは感じられたので、今日の作業はココまでです。

さあ、明日はエンヂンを整備して、いよいよ本格的な始動確認まで進めますよー。

 

(続く)

 

しつこいようですが、不動車を起こしたい方、ご相談くださいッ!

Valeo製セルモーターのO/Hと修理。

先日入庫したR100RSから取り外したValeo(ヴァレオ)製セルモーター、注文していた部品が入荷したので、在庫とするため修理&O/Hします。

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症状としては、スタータースウィッチを押すとセルモーターが回る音がしているのに、エンヂンが掛からないといったモノでした。タコメーターが動いていませんでしたので、クランキングできていない、つまりセルモーターがフライホウィールを回せていないと判断し、ソレノイドスウィッチの故障を疑いました。(クランキングしないと点火信号が発生しませんので、火花も飛ばず、タコメーターも動きません。)
ソレノイドスウィッチは、セルモーターのドライヴギアをフライホウィールに噛み合わせるという役割を(同時にドライヴギアを駆動すためのスウィッチという役割も)担っていますので、このような症状が出た場合、ソレノイドスウィッチに機械的、または電気的な故障が起こったと考えて間違いないと思います。

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(動画でご覧いただけます。)

実際に故障したセルモーターの症状を確認してみます。

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(動画でご覧いただけます。)

案の定、ソレノイドスウィッチが壊れてドライヴギアの飛び込み動作ができなくなっています。本来、ドライヴギアは飛び込んで(移動して)回転するのですが、飛び込まずに回転していますので、ソレノイドスウィッチ内部のコイルが断線しているようです。こうなると交換するしかありません。

てことで、セルモーターを分解します。

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純正のValeo製セルモーターはハウジングの内側にマグネットを接着しているだけなので、走行距離(始動回数)が多い車輌ではマグネットの剥離が起こりやすくなり、結果、エンヂンが始動できなくなるというトラブルにつながります。

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セルモーターにはかなり大きな電流が流れますので、それだけ熱を持つことになります。加えて、エンヂン上部に設置されているため、エンヂンが掛かっている間は常に高温に晒されていますから、接着剤が劣化してマグネットが剥がれるのも、ある意味、当然かもしれません。高年式の車輌では剥離対策が施されたValeo製セルモーターを使用しているモノもありますので、メーカー側でも認識、改善したのだと思います。

ちなみに、コレがマグネットが剥がれたモノになります。

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O/Hする際には剥離対策が施されたEME製マグネットハウジングに交換しますので、マグネット剥離の心配をすることなく長くValeo製セルモーターをお使いいただけます。

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マグネットが剥がれた状態でセルモーターを回すと、ギャギャギャー!という嫌な音がし、すぐに分かりますので、セルモーターから異音が発生したら早めに点検、修理することをオススメします。

余談ですが、エンヂンを掛けるときは、なるべく短時間で始動するコツを日々の始動の中で探るのが良いと思います。掛かるまで長くセルモーターを回すと、セルモーターにもバッテリーにも負担が掛かります。調子の良いエンヂンとキャブレターであれば、寒い時期以外はスターター(チョーク)要らずで始動できるハズです。
普段からスターターを使わないと始動できない場合は、まずはキャブレターの調整、同調を見直したり、O/Hするなどし、それでも改善しないようならシリンダーヘッドのO/Hも検討する時期に来ているのかもしれません。始動性の悪さが気になっている方、ご相談くださいッ!

ということで、EME製マグネットハウジングにキレイに清掃したアーマチュアコイルを取り付けます。もちろん、軸部はグリスアップしています。

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ブラシが減っている場合は交換します。

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ブラシホルダーとブラシを取り付けて、ブラシを押さえるスプリングをしっかりハメ込みます。

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新品のブラシに交換した場合、ブラシを押さえるスプリングの先端の位置が高くなるので、そのままだとカヴァーに干渉することがあります。カヴァーを仮組みして干渉しているようであれば、適当なスペーサーを入れます。M5のワッシャーでも構いません。

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カヴァーをしっかり固定すれば、アーマチュアコイル側はOKです。

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ドライヴギアを駆動する遊星ギアが収まっているところもカヴァーを外して清掃し、

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たっぷりグリスを入れておきます。

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通常のO/Hではココまでの作業になりますが、今回はソレノイドスウィッチも交換になりますので、もう一手間掛かります。

故障したソレノイドスウィッチ(右)と比べると、各部の材質が変更されているようです。

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ピストン(可動鉄心)のリンク部の材質が樹脂になっているのが気になりますが、それほど大きな力は掛からないので大丈夫なのでしょう。古いピストンと組み合わせても動作しますので、ピストンだけ再利用するのも良いかもしれませんね。

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各部を清掃、グリスアップしてソレノイドスウィッチを取り付けます。
ピストンが移動するとドライヴギアが飛び込む仕組みが分かると思います。

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で、先に準備しておいたアーマチュアコイルを取り付け、動作テストをします。

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(動画でご覧いただけます。)

バッチリ!ですね。これで、O/H&修理は終了です。

ココまで直すとそれなりにコストは掛かりますが、それでも新品のセルモーターを購入するよりは安く修理できます。マグネット剥離の心配のない新品を購入しても、数万キロでグリスアップ、ブラシ交換くらいのメインテナンスは必要になりますので、むやみに交換せずに整備、修理して使うのもアリなのではないでしょうか。

BOSCH(ボッシュ)製セルモーターは故障知らずの優れものですが、モーターを駆動するのに必要な電流が大きいため、バッテリーが弱ってくると途端に始動が困難になるという欠点があります。それに比べると、VALEO製のセルモーターはBOSCH製のモノよりも消費電流が小さく、トルクも大きいので、ちょっとバッテリーが弱ったくらいでは始動困難になることもありませんので、マグネット剥離さえなければ、確実にBOSCH製のモノより良いモーターだと思います。こういう対策部品があるのは本当に有り難いことですね。

 

遠方の方でも片道の送料をご負担いただければ、O/H&修理を承っております。ご相談くださいッ!

長期不動のR80、ステムベアリングの調整。

ちょっと前に仕入れた長期不動のR80、無事に登録も終え、販売に向け慣らしと試乗を進めています。

何度か試乗を繰り返していますが、やっぱり少しハンドリングが軽い感じがします。ハンドルが振れるほどではないものの、もう少しヌルッとしててグッという感じが欲しいトコロ。

てことで、ステムベアリングを調整します。
ハンドルを外してステムナットにアクセスできるようにして

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ステムベアリングのアジャスターナットをフックレンチで締め込んで、プリロードを調整します。
数値でプリロードを決めているわけではないので勘頼りになってしまうのですが、軽すぎず重すぎず、実際に走ってハンドルに振れが出ないようにします。

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で、トルクレンチでステムナットをしっかり締めて

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元に戻します。

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これで試乗してみて、良い感じになっていれば良いんですが。
もちろん、ダメなら納得できるまで繰り返します・・・。

2V-OHVのBMWで良くあるハンドルの振れの原因は、ほぼ間違いなくステムベアリングにあります。ベアリングの状態に問題がなく、プリロードの調整がきちんとされていれば、ハンドルの振れはまず起こりません。
ハンドルの振れが気になる方は、一度、ステムベアリングを点検することをオススメします。

 

(続く)

 

ハンドルの振れや、ステムベアリングの交換または調整も、ご相談くださいッ!

R65、フロントブレーキキャリパーのO/H。

R65(2本サス)にお乗りのお客様、トランスミッションの作業が終わったので、フロントブレーキキャリパーのO/Hです。

フロントブレーキのマスターシリンダー側はご自身で作業されたそうですが、キャリパー側はまだ手を付けていなかったらしく、最近、ちょっとブレーキの引き摺りが気になるとのこと。

まずはキャリパーを取り外し、

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分解して徹底的に洗浄します。洗浄前(上)と洗浄後(下)の違い、分かるでしょうか。
シールは交換し、錆び付いたボルトもキレイに磨いておきます。

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ピストンに錆があるので交換したいところですが、残念ながら部品の設定がないので入手できません。丁寧に錆を落として表面を均し、今回は再利用します。
でも、今後のことを考えると何か対策を考えなきゃいけませんね。

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ピストンの動きもかなりスムースになり、無事、キャリパーをO/Hできました。
長い時間試乗してみても、ブレーキフルードの漏れも滲みもありません。もちろん、引き摺りもまったくなし!

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心配だったストロークの小さいキックスターターも問題なく使用でき、というより、むしろ拍子抜けするくらいあっさりエンヂンが始動でき、クラッチの不具合もバッチリ直りました。
元々エンヂンの調子は良いR65ですが、今回は車体周りの整備もチョイチョイ施していますので、これで益々楽しく走り回れますね!

 

ブレーキのO/Hだけでなく、車体各部の点検と整備も、ご相談くださいッ!

R65、フライホウィール周りのオイル漏れ修理とトランスミッションの取り付け。

R65(2本サス)にお乗りのお客様、トランスミッションO/H作業の続きです。

トランスミッションのO/Hは終わりましたが、クラッチの不具合を改善するため、クラッチ周りも点検、整備します。
注意! クラッチやフライホウィール周りの整備には注意すべき点が多々あります。安易な作業はせず、正しい知識を持ったディーラーまたは専門店に任せましょう。

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クラッチ周りを取り外すと

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ダストがこんもり出てきました。

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クラッチ周りをキレイに清掃し、点検します。クラッチ板の状態も良く、厚みもまだ十分残っていました。あと40,000~50,000kmはもちそうです。プレッシャープレートにも異常な磨耗はなく、良好でした。

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ここまでの整備でクラッチの不具合が改善すれば良いのですが。

続いて、ココのオイル漏れを修理します。
この付近にオイルが漏れると、漏れたオイルとクラッチ板のダストが混ざって、こんな感じの頑固な汚れになりますね。インプットシャフトのオイルシール、オイルポンプカヴァーのO-リング、フライホウィールのオイルシール、このいずれかが劣化するとココにオイルが垂れてきます。
放っておいても良くはなりませんので、この辺にオイルが滲んだり漏れてきたら、トランスミッションのO/Hと一緒に作業しちゃいましょう。

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まずはフライホウィールを取り外し、

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クランクシャフトとの接続部を点検します。異常な磨耗も傷もなく、良好な状態でした。フランヂ部のO-リングはシール性が落ちてオイルが少し漏れ始めてるので、交換ですね。

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クランクケース側のオイルシールには滲みも漏れもありませんでした。このシールはちょっと高価なんで、交換せずに済んで良かったです。
今回のオイル漏れは、オイルポンプカヴァーのO-リングの劣化が原因てことですね。

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というわけで、オイルシールを保護して洗浄します。しかし、手強かった・・・。

どうですかッ!このピカピカ具合ッ!

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オイルポンプ、オイルポンプカヴァーの状態も悪くないので、

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カヴァーをキレイに洗浄してO-リングを交換します。フライホウィールのO-リングも交換です。

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交換したO-リングをよく見ると、潰れて平らになってますね。こりゃ、漏れるハズです。

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オイルポンプカヴァーをしっかり取り付け、

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フライホウィールを元に戻したら、

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クラッチ周りも取り付けます。

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これでトランスミッションを取り付けられるんですが、その前にチョイチョイとやることが。

以前に交換したリアサスペンションのブッシュ、注文をミスった上側のブッシュが入荷したので

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ようやく交換できました。お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした。

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ブレーキペダルのピヴォット部もまったくメインテナンスされてなかったので、

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キレイにしてグリスアップします。

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シフトペダル側も酷かったので、こちらもビシッとキレイにしてグリスアップしました。

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こういう部分をしっかりメインテナンスすると、渋かったり、固かったりしたブレーキやシフトのタッチがかなり良くなりますね。

スウィングアームのピヴォットベアリングも古くなってたんで、洗浄してたっぷりグリスアップしました。ベアリングの状態はあまり良くありませんが、これでもうしばらくは使えると思います。

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ドライヴシャフト連結部のブーツも、ひび割れや補修跡があるので交換です。

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お決まりのスピードメーターケーブルの防水ブーツと、傷んだソケットも交換します。

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で、こうなりました!

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作業を始めて三日目、今回はなんだかとっても時間が掛かりましたが、ようやくトランスミッションが車体に戻りました。ウレスィ~。

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エンヂンのトップカヴァーを戻す前に、ブローバイホースの取り出し部からオイルが滲んでたので、ホースのクランプをしっかり締めておきました。
ホースが劣化してくるとココからオイルが滲んできますので、気になる方はクランプを締め直してみると良いかもしれません。ホース自体がダメになっていると交換するしかありませんが、けっこう緩くなっている車輌は多いです。

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てことで、トランスミッションのO/Hとキックスターターの取り付けが終了。
グッジョブ、オレ!

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ただ、この年式のR65のステップは少し位置が高いようで、キックレヴァーを踏み込むとすぐにステップのゴムに当たります。ちょっとストロークが小さいのが気になりますが、上手くキックでエンヂン始動できるかな?

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さて、お次は追加作業のブレーキの整備です!

 

(続く)

 

フライホウィール周りのオイル漏れや、クラッチ周りの点検も、ご相談くださいッ!

長期不動のR80、リアサスペンションのブッシュの交換。

ちょっと前に仕入れた長期不動のR80、少しずつ再生に向けて進んでいます。

外装の取り付けても終わましたが、ちょっとやり残したコトがありました。

リア周りの作業をしているときに気付いたんですが、サスペンションの

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ブッシュがグズグズになってました。

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すぐに部品を注文したものの、なかなか入荷せず後回しになってしまいました。

てことで、ブッシュも届いたんでグイグイッと交換します。

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グズグズのブッシュを交換するだけでも、意外にシャキッとした足回りになると思います。
ブッシュがヘタったまま乗られている方が多いと思いますが、社外の高性能リアサスペンションに交換する前にブッシュ交換してみることをオススメします。抜けたり動きが渋くなっている場合はサスペンション自体を交換するしかありませんが。

そんなこんなで、リアサスペンションを元に戻し、サイドカヴァーも取り付けて作業終了です。
やっと終わった~!

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これで、いよいよ登録できますね。行ってきマース!

 

(続く)

 

リアサスペンションの交換だけでなく、ブッシュ交換も、ご相談くださいッ!