ちょっと遠方のお客様からトランスミッションのO/Hのご依頼です。
走行距離57,000kmほどの車輌(R100RS、モノサス)を入手されたばかりだそうですが、外観がかなりヤレた感じだったらしく、当初は外装を再塗装してエンヂンをキレイに磨き、フレームも錆びたトコロを塗り直して乗り出すつもりが、手を付け始めたら車輌がバラバラになっていたッ!とのこと。
そんな折に当店のブログでO/Hのサービスを知り、これを機にトランスミッションもO/Hすることにしたそうです。有り難いことですッ!
さっそく、届いたトランスミッションを確認します。
ニュートラルスウィッチとドレインボルト付近にオイル汚れがありますが、
このぐらいの汚れは普通ですね。
エンヂンに取り付ける側のオイル汚れがちょっと強い気もしますが、インプットシャフトのシールからの漏れはなさそうなので、おそらくオイルポンプカヴァー辺りのオイル漏れが原因でしょうか。
分解前にインプットシャフトの回り具合を確認。
アウトプットシャフトの回り具合も確認し、作業後、この状態と同じくらいクルクル回るようにします。やってやるッ!
てことで、作業前の確認も終わったので、トランスミッションを分解していきます。
カヴァー下側のボルト、錆びもそうですが、ちょっと砂が詰まってることがよくあります。そのまま工具を突っ込んで回すとナメてしまうことがありますので、ちゃんとキレイにしてからボルトを回します。
特殊工具を使ってアウトプットフランヂを取り外します。
シールとの接触部の状態も良好で、当たりが付いて光ってはいますが、爪が引っ掛かるようなこともありません。
んで、取り外したカヴァー。カウンターシャフトのベアリングが収まるトコロにスラッヂが溜まっていますが、ココは構造上オイルが下に逃げないので、ある程度の距離を走った車輌であれば、どれもこんな感じだと思います。
ケース内部のギア、シフトセレクターなんかを取り出したら
オイルシールを取り除いてカヴァーとケースの洗浄です。
ケースの中も非常にキレイな状態でした。
外したドレインボルトにも鉄粉がまったく付着していなかったので、お客様がお送りいただく前に清掃していないのだとしたら、前オーナーはしっかり乗って、しっかりオイル交換されていたのではないでしょうか。このトランスミッション、当たりだと思いますッ!
こりゃ、気合が入りますね。(いつも入れてます。)
洗浄の際には、オイルフィラーの穴や
オイルドレイン、ニュートラルスウィッチ取り付け部の穴もしっかり均してキレイにしておきます。車載の状態でも作業できますが、ケース単体でのほうがやりやすいですからね。
どうでしょうかッ!
当たり面もご覧の通りッ!
もちろん、カヴァーガスケットもキレイに剥がれているッ!
スミマセン、ジョジョ世代なもので、取り乱してしまいました。
気を取り直して、ケース内部の部品の点検と部品交換です。
シフトセレクターを分解します。
走行距離の多い車輌で折れることのあるリターンスプリング、このスプリングも擦れて光っているトコロが見受けられますね。コレが進行すると、痩せた部分が割れたり折れたりして、スプリングが破損した時のギアから変速できなくなってしまいます。
出先でそんなことになれば、どうやって帰れというんでしょうか。しかも、それが1速だったりしたら・・・。不安になった方、是非、ご依頼をッ!(悪質な営業)
樹脂製のローラーは接触面に磨耗もなく、軸部のガタもなく良好でした。
他の軸部や接触部にも異常は見られませんでしたので、シフトセレクターをキレイにし、元通りに組み立てます。このとき、2枚のギアの歯を正しく噛み合わせておかないと、まったく変速できなくなりますので、忘れずに確認しておきます。
続いて、シフトフォークの確認です。異常な磨耗や焼けた跡もなく、非常に良好ですね。
各シャフトのギアも点検します。こちらも大変良好で、歯にもドッグにも異常なしです。
ブッシュのガタつきもありませんでした。
これだけ各部の状態が良いとシフトもスコスコ入りますし、ギア抜け、ギア鳴りも、よほど雑な操作をしなければまず起こらないと思います。
ベアリングにもガタはあまりありませんでしたが、もちろん交換しておきます。
それにしても、インプットシャフトのこのインナーレース、普通はもう少しシールとの接触部に強い当たりがあるもんなんですが、このレースにはそれがほとんどありません。
ひょっとしたら、以前にしっかりO/Hされているのかもしれません。前オーナーのメインテナンスも良かったんだと思います。俺の出番、要らなかったんじゃ?と思うほどです。アハハ。
というわけで、各部の点検と交換も終わったので、トランスミッションを組み立てていきます。
ケースをしっかり温めて、シャフトとシフトセレクターを取り付けます。
ケースが冷めるのを待って、シム調整を。ビシッと決まったッ!
シム調整が終わったら、カヴァーをしっかり温めて取り付けます。シム調整も大事なんですが、このカヴァーの取り付け次第でシャフトの回り具合が軽くも重くもなりますので、ココが一番のポイントかもしれません。
カヴァーが冷えるのをちょっと待って、インプットシャフトとアウトプットシャフトがクルクル回ることを確認したら、シールを挿入してアウトプットフランヂを取り付けます。
このフランヂの固定ナット、締め付けトルクが220±15N・mとなってますので、細マッチョ気取りの人(俺)にはちょっとキビシイです。あ~、もっと長いトルクレンチが欲すぃ~。
お送りいただいた際にシフトレヴァーが外されていたので、手持ちの部品を取り付けて1速から5速までの変速を確認すれば
できました。
インプットシャフトもッ!
アウトプットシャフトもッ!
クルクル軽いッ!
以上、無事に作業も終わりましたので、こんな感じで
丁寧に梱包してお送り致しますので、もうしばらくお待ちください。
あとは、実際に車体に取り付け、試乗していただいて、シフト操作まで確かめていただければOKですね。車輌のセミ・レストアのご報告も兼ねて、ご来店くださるのをお待ちしております。もちろん、ダメ出しのご連絡でも構いませんが・・・。(緊張)
この度は、トランスミッション単体での作業のご依頼、有り難うございましたッ!
今回は、元の状態が良かったため比較的楽な作業になりましたが、どのような状態だったとしても目指すゴールは同じですので、「なんか、トランスミッションから異音が聞こえるような・・・」、「最近、ギア鳴りが多くなってきたかも?」、「アララ、またギアが抜けたよッ!」なんて症状が出始めましたら、ちょっと部品代は多く掛かってしまいますが、O/Hを検討されて良い時期かもしれません。
遠方の方でも片道の送料をご負担いただければ、O/Hを承っております。ご連絡くださいッ!